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問題行動を悪化させる物は?問題行動における獣医師の役割は?

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皆さんは、犬の問題行動を悪化させる物って何だと思いますか?

犬の問題行動における獣医師の役割って何だと思いますか?

今回は、この二点について書こうと思います。

問題行動を悪化させる物は?

問題行動を悪化させる物は、優位性理論や直接罰を用いる訓練法や先天的な要因です。

 

・優位性理論

優位性理論(Dominance Theory)は、「問題行動の原因は自分の階級を上げようと

する犬達の出世欲にある」とする説です。

 

米国獣医動物行動研究会(AVSAB)は、犬に対する罰を正当化してきたと思われる

優位性理論に関する声明を発表して優位性理論の存在意義はもはや無くなりつつある事を

明言しています。

 

以下は、優位性理論に関する声明の要約です。
「問題行動の原因は自分の階級を上げようとする犬達の出世欲にある」とする

優位性理論によると「問題行動を起こさない様にする為に飼い主がアルファ(ボス)になって

犬達に出世を諦めさせる」事を必要とする。

そして「飼い主がボスになる」為に時にアルファロールやマズルコントロールの様な力技を

必要とする。

しかしこうした認識が、飼い主によるペットに対する体罰を助長して問題行動を悪化させて

安楽死の数を増やしている真犯人ではないだろうか?

野生の動物や飼育されている動物は、階級闘争(資源に対する優先順位を高める)の為に

攻撃性を見せる事は、確かにある。

しかしそれだけで全ての行動は、説明出来ないだろう。

たとえば無駄吠えや無秩序なあいさつや呼んでも来ない等の問題行動は、階級と全く関係なく

「飼い主が偶発的に強化してしまった」結果に過ぎない。

優位性理論は、「何かしらの争い事があった」時にその原因として自動的に想定されるべき物

ではない。

人間の世界で常に「リーダーがプレッシャーをかけて方向性を指示する」様な恐怖政治と

権力乱用は、消極的な服従だけ誘起してベストパフォーマンスをチームから引き出さないと

明らかになっている。

全ての動物種に適用出来る様な確固たる科学的基盤をもった学習原理を用いる事が、

動物を訓練したり行動に修正を加える際の妥当な方法であり「私達がペットと意思の疎通を図る」

際の要となるでしょう。

その方法は、優位性理論に則って誤った行動に罰を加える事ではなく正しい行動に報酬を

与えて強化して誤った行動に報酬を与えないという事です。

 

「AVSABがこうした声明を発表した」背景にアメリカ国内におけるショービズの影響が、

多少あります。

犬のしつけをテーマとしたとある番組で視聴者をひきつける「見せ場」を作る為に力づくの

アルファロールや「犬が苦手としている」刺激の中に放り込んで克服させようとする氾濫法等が、

放映されます。

「こうしたしつけ方を素人が見よう見まねで行ってしまう」事は、犬と飼い主の信頼関係を

崩すばかりか時に反撃行動から咬傷事故に繋がる事になりかねません。
AVSABの声明文にマスメディアによる面白半分のしつけ方法を牽制して咬傷事故の結末として

シェルター(動物保護施設)に送られるペットの数(2011年度で約150万頭)をこれ以上

増やさない様にするという狙いが、あります。

 

・直接罰を用いる訓練法

直接罰は、「罰を与えている人物が飼い主である」と「犬が認識している」状態で与える罰の事で

体罰もこの中に含まれます。

以下はアメリカのしつけ教本の中に記されている直接罰を用いた訓練法です。

 

こうしたしつけ方は、まるで伝言ゲームの様に海を越えて若干のマイナーチェンジを経て

日本国内で聞いていると思います。

 

・歯をむいてうなったとき
犬が服従してうなるのをやめるまでムチで打つ。強く打つ時は体の前部や後部の

「筋肉がしっかりついている」部分やお尻を打つ事。

 

・穴を掘るとき
犬が掘った穴に水を入れて「犬が溺れてしまいそうになる」まで頭を水の中に突っ込む。

翌日同じ穴に連れて行き「犬が穴を掘る」かどうか確かめる。

 

・犬の服従心を高めるとき
チョークチェーンをぐいと引く。「犬は悲鳴を上げる」かもしれないがひるんではいけない。

なぜなら鳴くのは犬が飼い主を操ろうとしているから。

 

・オスワリやマテをしつける
クリップ留めタイプのチョークカラーを犬の首の高い位置に装着して上方にぐいと引っ張る。

 

・オイデをしつける
リードを付けて呼び声を掛けた後に訓練者の方に荒々しくすばやく引っ張る。

 

・悪さをした子犬を叱るとき
両首をしっかりつかみ犬の上半身を地面から持ち上げ何回か振り回す。

これは、スクラフアンドシェイクという方法である。

優位性を示しやすい犬種ほどあごの下をがっちりつかむ事。

 

イルカの調教師としてキャリアを積みクリッカートレーニングの普及に尽力した

カレン・プライア女史は著書うまくやるための強化の原理・二瓶社の中で

「動物にとってトレーナーは、面白くてわくわくする好子(ごほうび)をくれて

生活を楽しくする宝庫である。

トレーナーにとって動物の反応は、面白くて強化的である。

それによりお互いに愛着が芽生えるのは当然であろう」と述べています。

つまり「ほめてしつける→ペットが喜んで学習する→しつけがうまくいく→飼い主が楽しくなる→

ほめてしつける」という好循環が生まれるという訳です。

 

罰のうち特に「罰の執行人が飼い主である」とばれた状態で与える直接罰を用いるしつけは、

「好循環と真逆の悪循環が生まれる」危険性を持っています。

 

「ペンシルベニア大学ライアン病院が発表した」研究報告によると望ましくない行動をした犬を

叩いたり蹴ったりする・犬が口にくわえたものを力ずくで放させる・アルファロールをする

(力ずくで仰向けに寝かせて押さえつける)・にらんだり犬が目をそらすまで凝視する・

ドミナンスダウンをする(力ずくで横向きに寝かせる)・犬の顎をつかんで左右に振る等

体罰や不快感を伴うしつけを受けた犬の少なくとも1/4から攻撃的な反応が、引き出されたと

されています。

 

自分を肯定的に評価してくれる相手に好感を抱く現象は心理学用語で好意の返報性と言います。

犬をほめてしつけた時に生まれる好循環は、好意の返報性と言えます。

直接罰を用いてしつけた時に生まれる悪循環は、敵意の返報性と言えます。

 

・先天的な要因

動物行動医学・チクサン出版社の著者カレン・オーバーオール女史は、勤めている

ペンシルバニア大獣医学部付属動物病院(VHUP)の行動クリニックで「問題行動を

起こすペットの多くは、「しつけが誤っている」のではなく「実際に異常がある」事や

「問題を引き起こしている器質的(先天的)な原因があった」としています。

こうした先天的な要因に対して彼女は、「今後薬理学の分野が台頭するのではないか」と

述べています。

 

また犬猫の問題行動専門家ヴァレリー・オーファレル女史は「悲しいけれど問題犬を飼っている

飼い主の方に落ち度があるという現実であり同時にまた神話である」として犬の側に問題点が

ある事を指摘しています。

 

アメリカで1995年以降動物行動医学は、専門委員会による正式認可を受けた専門分野と

なっており獣医学のカリキュラムに加えられました。

専門家をトレーニングする為の厳格かつ一貫した基準が、提供されています。

そして米国の多くの州で動物の問題行動に対して診断を下したり特定の治療を進めたり必要な

薬物を処方したりできる人物は、免許を保有する獣医師だけです。

「先天的な要因に対して獣医師が薬を処方する」事や「後天的な要因に対して獣医師や信頼の

置けるトレーナーに飼い主がトレーニングを委託する」事という形が、浸透しつつあります。

 

犬の問題行動における獣医師の役割は?

日本で近年獣医学教育の正規カリキュラムに動物行動学と臨床行動学が、取り入れられました。

また2013年秋に第一回獣医行動認定医試験が、行われました。

こうした流れは、「獣医師の役割が今までの病気を治す人という枠を超えペットの行動を直す人

という枠にまで広がりつつある」事を意味しています。

つまり「犬がうなったら口を押さえつけてじっとにらみなさい!」というトンチンカンな

アドバイスをする獣医師が、今後少なくなっていく事を期待できるという事です。
臨床行動学の最終目標は、人間と動物の関係性を「飼い主が望む」姿に再構築して

そのプロセスを通じて動物のストレスを軽減し動物の心理的健康を守る事です。

つまり「人と動物の双方がストレスフリーで幸せと感じられる」生活環境へ導く事が、行動診療の目的です。
動物病院にとって行動診療は、診療時間あたりの収益として必ずしも大きくありません。

なので動物病院は、導入する際少なからず二の足を踏んでしまいます。

しかしその一方で導入すると以下の様なメリットが、あります。

 

・飼い主と信頼関係を築き上げる
・動物が行動診療を通じて病院やスタッフを好きになる
・病院の診察や治療効率が向上する
・パピークラスの開催等地域社会における啓蒙の場になる

 

皆さんは、この記事の内容を知っていましたか?

私は、この記事を参考にして犬の問題行動を悪化させない様にしたり犬の問題行動を直す時に

獣医師に頼ったりしたいと思います。

次回は、「犬の代表的な問題行動は何か」という事や「犬の代表的な問題行動を直すコツ」

について書こうと思います。



 

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